「保護」行政のあり方

今日、社会福祉制度の抜本的改革を検討する場合・・・


この社会福祉事業法を含む現行法令に残存してきた行政警察思想を完全に払拭し、国民がそれぞれのライフ・スタイルを前提にして共に生きるために「支援」の社会システムを形成し維持していくという考え方へと脱却していかなければならないでしょう。


「収容」は「入所」へ、「給付」や「扶助」は「支援」へ、「措置」は「利用」ないし「利用手続」へと法令用語も全面改正されるべきです。


だれでも、いつでも、必要な福祉サービスを利用できる公共、民間の供給システムをいかに整備していくかが時代の課題です。


各自治体は、その計画や実施要領をすべて見直し、その改正に着手する必要があります。


一方で地域福祉、有料福祉を強調しながら、他方で相も変わらず「給付」とか「措置」とかいっているのでは一貫性を欠くのです。


一般に、行政の関与のあり方は民間ないし住民の自立の意欲と条件に関係しているといえるでしょう。


この自立性をめぐる最も重要な今日的課題の一つは高齢者福祉における支援システムの確立ではないかと考えられます。


ここでは従来の「保護」行政のあり方が問われるのです。

人工生態系がもたらすもの 5

いくつかの工業諸国で、湖岸への人びとの立ち入りや、貯水池の湖面変動に関するはげしい論争によって強調されています。


このことからもわかるように、放水の範囲や湖岸の制御は、こうした計画にとって決定的に重要です。


1970年にアメリカの貯水池では延べ1億1500万人以上の魚釣りが行なわれたと計算されています。


これは全漁民の収入である6億ドルをしのいでいることになります。


魚釣りの圧力は、過去25か年にわたり、年間3%増加してきており、貯水池の操業についての一般の関心はもっと急速に高まってきています。


この増加した魚釣りの大半は、新しい貯水池で行なわれてきました。


・・・というのは、新しい貯水池こそ急激に拡張しつづけている魚の生息地の唯一のタイプだからです。


あらゆるタイプのレクリエーション利用を計算すると、1969年にはTVAの人造湖には4700万人が訪れてきていました。


また、1970年には、コープス・オブ・エンジニア社により操業された300あまりの貯水池に、2億7600万人が訪れています。

人工生態系がもたらすもの 4

生活を支えられるような安定した生計のビジョンを与えるために、湖盆の全住民をふくめた幅の広いいろいろなコースを提供する訓練センターや普及サービスの役割があります。


これらのサービスは漁民の訓練にもあてられます。


また、湖岸周辺や放水地域内に小土地を耕作するようになる小規模農民たちと共存する普及所の職員にもあてられます。


時間の制約があっても、ダム建設に関与している地域住民を訓練するのは望ましいでしょう。


これは湖盆での他の型の建設に移行できるような技術に重点がおかれます。


今日まで、ごくわずかな地域住民が労働力として雇用されてきたにすぎないのです。


多くの人造湖がもっている観光とレクリエーションに対する潜在能力は、まだ開発されていないところが多いですが、これは絶大なものです。


それには舟遊び、魚釣り、キャンプ、および湖面での土地利用システムの一環としての複合レクリエーションの開発などがあげられます。


この複合レクリエーションには、低収入地域であっても、マリーナ、狩猟、その他のスポーツや、各種各様の公園と関連施設などをふくむことができるでしょう。

人工生態系がもたらすもの 3

住民がどこか別の居住地に移動するとか、未免疫者が感染住民と混合するとかした場合に、感染の特別な機会が存在します。


大部分の熱帯人造湖研究の弱点は、貯水と移住の以前に、湖盆住民の公衆衛生と栄養に関する基礎データがないことです。


移住時期の移住者、とくに子供の発病率と死亡率が上昇する数字が知られていますが、貯水前の調査がないために、その重要性を評価することは難しいのです。


ダムの影響がはっきりしている場合には、貯水池が造られるまえに湖盆の住民の教育と訓練が開始されなければならないですが、このことはめったに行なわれません。


これと対照的に、移住する児童たちが教育を中断せずに継続することができるように、既存の学校から移籍したり卒業したりする記録や、新しい学校を建設する記録はよく保存されていることが多いのです。


理想的には、移住者に対する計画は、ダム建設をすすめる決定直後のできるだけ早い時期に発足してほしいものです。


この計画の一つの機能は、住民に移住の準備をさせることであり、他の機能は、住民が環境の激変に直面するさい、多忙のままにしておくことです。


さらにもう一つの機能は、新しいコミュニティを建設し、生計をたてるのに必要な技能を提供することです。

人工生態系がもたらすもの 2

カリバ湖では、ヒト・トリパノゾーマ症の流行は、これらの病原昆虫が以前は生息していなかった地域に、数千人もの南岸住民が再配置させられた時点で発生しました。


ボルタ湖では、予想されたようにダム下流に生息地をもつブユの繁殖がひじょうにふえました。


しかし、同時にダム湖の貯水により、以前河川域であったところでの疫病の発生範囲を減少させました。


原生動物の一種のトリパノゾーマが人の体内の血液や組織に寄生し、アフリカ睡眠病という風土病の原因になります。


公衆衛生でのもう一つの問題も、移住者と受入れ側住民に直接関係があります。


移住期間を通じて、移住のストレスや農業生産性の減少が、精神衛生や栄養と、広い範囲にわたる病害に対する感受性などに、不都合な影響をもたらしています。石塚孝一氏によると、発展途上国では、医療サービスが改善されたとしても、人口密度の増大と移住につづく混雑が、寄生性病害の発生範囲と強度とを高めることになるかもしれません。


結局は全移住地に設置された集落水道の不備のために、水に由来する消化器系の伝染病の特別な危険があります。

人工生態系がもたらすもの

漁民はとくに脅かされています。


旅行者や他の訪問者もやはり危険にさらされています。


ボルタ湖や他の熱帯貯水池の住血吸虫症の伝播が、生産力に及ぼす影響を正確に評価することは難しいですが、われわれはこの場合、疑いもなく大きな社会的出費を払って対処しているのです。


泌尿器タイプにせよ、消化器タイプにせよ、住血吸虫症は、多くの熱帯湖沼や関連する灌概水に接触する誰にでも危険な病気です。


これら2つの密接に関連のある病気の疫学と制御は、ボルタ湖近辺に本部をおくUNDPの地域間計画により研究されています。


これらの病気の流行と、それを軽減したり、制御したりするのに用いられるいろいろな方法に関するいくつかの不確実性を解決することが試みられるでしょう。


人造湖に関連したもう一つの医学的脅威はマラリアです。


蚊の幼虫を浅瀬で乾かしてしまうために、適当な時間に水位を急激に低下させることにより、TVA貯水池ではこの危険をうまく処理してはいるが、この技術は他の型の貯水池では、蚊の繁殖を促進させるかもしれません。


住血吸虫症とマラリアに関するとくに複雑な問題は、病気の媒介者と、浮遊性、沿岸性および底生の水生植物層との間の相互関係です。


これら2つの病害の伝播は、熱帯の人造湖に付随した灌概システムと養魚池によって増大してきています。


他の問題はツェツェバエやブユのような、病気を媒介する宿主や、宿主と関係のある住民の再配置と関係があります。

都市化と新都市

孤立した地域では、湖盆の最初の町は、工事請負人やその労働力に住宅とサービスを提供するために、ダムサイトのごく近くに位置しています。


建設期間中は、町はふくれあがります。


将来の広範な諸機能、つまり商業、サービス・センター、観光施設、レクリエーション施設および工業などの整備がダム計画にふくまれていなければ、その後は人口と商業は急速に低下してしまいます。


土地と水の利用計画を通じて、全生態系をつくり出そうと試みる国家的規模の実験として湖盆を考察したほうがよいのかもしれません。


このような実験は、人口を維持するだけでなく、人口をひきつけておくために、湖盆内の生活を豊かにし、多様化することによって、地方から都会への住民の流出を遅らせたり、逆流させたりすることを計画できるでしょう。


次に、公衆衛生についての問題です。


一つにはマラリアが時系列的に減ってきたため、また、一つには人造湖建設と灌漉計画が住血吸虫の中間宿主であるカタツムリの新しい生息場所を提供するために、熱帯の多くの場所では第1位の公衆衛生問題として、住血吸虫症がマラリアにとってかわってきています。


どのようにして人工生態系が湖盆住民と移住者の健康に不都合な結果をもたらすかを、人造湖は示しています。

新しい土地利用パターンとは 2

住民が再配置され、安い電源が得られるということは(ばらばらに居住したばかりの時には、電力はひじょうに高くつきますが)、地域開発に対する起動力としてラジオやテレビの利用を示唆します。


視聴技術と効果的な電波輸送は、より広範な地域関係に湖盆を組み込む速度を早めることができます。


支線道路網は2方向交通を促進でき、移住者や、新しいアイディアや理想を湖盆に運びこむことができます。


また支線道路網は、地域住民が生産物を市場に出荷したり、青年男女が都市に移動することを容易にします(都市はこれらの青年男女の流入によって利益を得る場合も、得ない場合もありますが……)。


新しい湖沼の創出は、住民のための新しい、より生産的な環境を設計する好機会を提供します。


しかしこの好機会は無視されることが多いのです。


無視される第1の理由は、われおれがこの報告で示してきたような将来計画がないことです。


第2の理由は、開発に責任をもつ企業体間の協力が不十分だという、地方特有の難しさです。


第3の理由は、革新的な計画の基礎となる適切な調査と、想像力に富んだ研究が欠けているためです。


・・・最後に、このような試みのための資金が足りない場合が多いからです。

新しい土地利用パターンとは

主要なアフリカの人造湖の場合、適切な水路輸送システムをさらに開発すべきです。


事実、漁業援助のための水路輸送は、カリパ湖とナセル湖では、とくに問題です。


つまり、多くの漁民は孤立したキャンプに居住しています。


農村開発を促進するために、政府が支線道路網を建設し、維持するのとまったく同様に、効果的な水路輸送を体系立てる必要があります。


政府がアフターサーピスを継続しょうと、それを地方自治体に肩代わりしようと、どちらにせよ湖面の水路ができ、湖岸利用が行なわれ、漁民の水と土に対する要求が満たされるようになるでしょう。


湖盆開発のさいには、支線道路網、水路、市場、銀行、金融などの総合システムに注意を払う必要があります。


孤立した湖盆の開発の初期には、固定市場や臨時市場、郵便貯金を取り扱う郵便局、自動車保険、協同組合や他の信用組合などの施設を設ければ十分でしょう。


つづいて町や工業が発展するにつれて、商業サービスの拡大が必要になるでしょう。

工業開発と湖盆の電化 3

湖沼近辺の工業開発は、潜在的に矛盾しあっている国民的、地方的、地域的利害と複雑に関連しています。


国民経済の効率はさておいて、地域の経済成長に重点が向けられる場合には、輸出を基調とする地域開発の考え方をすれば、その地域がはっきりとした相対的利益を得るような産物の生産体制を強めることになるでしょう。


漁業やその他の水関連産業はその例といえますね。


湖盆の総合的経済成長を助長する場合には、湖盆人口、国家的利益、生物生産の潜在力および環境の質などをふまえて、いろいろな型の工業の費用と便益を事前に評価することが課題となります。


大きな湖沼の造成は、以前の交通路を破壊し、新しい需要と便益をつくり出します。


以前には対岸の住民と交流する場合、河川はたいした障害にはならないと思っていた湖盆住民は、いまや広大な水面によって、以前の仲間から自分たちがきり離されたと感ずるかもしれません。


新しい魅力的な連絡道路と水路は、新しい土地利用パターンに組み込まれるでしょう。


同時に、上流(および下流)地域と貯水池とをつなぐ水路は、貯水池利用に付随する諸変化とあいまって、湖盆開発に付加的な便益を提供します。

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